国内の獣皮をはじめ、十分に活用されていない国内資源を、多様な職人技や現代作家の感性によるモノづくりで「活かしきる」こと。
それは、人を含めたあらゆる存在が有機的につながり合う循環をつくり、各地で積み重ねられてきた資源活用の知恵を伝える行為でもあります。
「活かす」ことで生まれる新たな価値観、そして古来より受け継がれてきた豊かな精神性を守り、次の世代へと紡いでいく――
それが、ライフスタイルブランドmomijiが目指す姿です。
人も、モノも
活かすライフスタイルブランド
momiji
国内の獣皮をはじめ、十分に活用されていない国内資源を、多様な職人技や現代作家の感性によるモノづくりで「活かしきる」こと。
それは、人を含めたあらゆる存在が有機的につながり合う循環をつくり、各地で積み重ねられてきた資源活用の知恵を伝える行為でもあります。
「活かす」ことで生まれる新たな価値観、そして古来より受け継がれてきた豊かな精神性を守り、次の世代へと紡いでいく――
それが、ライフスタイルブランドmomijiが目指す姿です。
廃棄される獣皮を再び生かし、
人と自然の物語を紡ぐ。
害獣駆除と獣皮の現状
害獣駆除とは、鹿・猪・熊など、農作物に被害をもたらす野生動物を各自治体が定めた枠内で捕獲することです。自治体は地域のハンターに依頼し、捕獲した獣には報奨金を支払いますが、その多くは処分費用に回され、結局、捕獲された動物の多くが土中埋設や焼却、廃棄処理場への持ち込みといった形で廃棄されてしまいます。
実際、全国で捕獲される野生動物のうち、わずかな割合しか食肉として利用されておらず、その皮に至ってはさらに少ないごく一部しか活用されていません。
ハンターや食肉加工所に問い合わせると、廃棄処分が一般的である現状が浮き彫りになります。廃棄にはコストがかかり、特に焼却は環境にも負担をかけるなど、悪循環となっています。
この背景には、ハンター個人が負う労力や経済的負担の大きさがあります。例えば、大型の獣を運ぶには専用の道具や車への積載用具が必要です。解体施設が近くになければ自ら小屋を建設し、肉を保存する冷蔵・冷凍設備も揃えなければなりません。これらの設備を自前で整えられるハンターは限られているため、利用可能な資源であっても廃棄せざるを得ない状況が続いています。
私たちは解体施設や保存設備を持つハンターとともに害獣駆除に携わっていますが、利用を拡大するには多くの課題が残ります。こうした背景からmomijiは、全国で行われている有害鳥獣駆除の副産物として生じる獣皮を活用し、未利用資源を「使い切る」試みに取り組むべく発足しました。
農林業被害と国内資源の重要性
ある年度の統計によれば、野生鳥獣による農林業被害は全国で相当の金額にのぼり、被害面積は広大な規模、被害量も膨大な量に及びます。主な被害例として、シカやイノシシ、アライグマ、カモなどが報告されています。
さらに別の統計によると、都道府県別被害額では特定の地域が全体のかなりの割合を占め、続いて複数の県が続く状況が見られます。こうした被害は、農家の経済的損失のみならず、営農意欲の低下や耕作放棄地の増加など、地域に深刻な影響を与えています。
国内の食糧確保は国力維持において極めて重要な課題であり、高齢化に伴う農家の引退、その後継者不足、新規参入を試みる若い世代への負担軽減など、農業基盤の再構築が求められています。その対策には、人間の都合で捕獲された野生動物を資源として捉え、食肉や皮革を有効活用する仕組みが欠かせません。
国内の皮革産業は縮小傾向にあり、品質の高い革は海外から輸入されるケースが増えています。しかし、国内で廃棄されている獣皮を活用し、タンナーや革職人へと繋いでいくことで、国内の製造業を支え、国内資源を循環させることができます。皮革は原始の時代から人間と自然の共生を象徴する持続可能な素材であり、その価値を現代に繋ぐことは、伝統精神の保護にも繋がります。
タンナーと革の歴史
「タンナー」とは、動物の「皮」を「革」へと加工する職人のことです。
皮はそのままでは腐敗しますが、鞣(なめ)すことで、衣料や小物など、日々の暮らしに寄り添う素材へと生まれ変わります。この技術は非常に古い時代にさかのぼり、狩猟採集民は獣の肉を食糧とし、皮を衣服として利用していました。古代から受け継がれてきたこの手法は、形を変えながら現代にまで息づいています。
momijiが扱う獣皮は、鹿・猪・熊といった野生動物のものが中心ですが、畜産由来の牛皮や豚皮も活用しています。野生動物の皮は、個体差や傷など、自然と自由に生きてきた証が刻まれています。それは人間も同じで、私たちの傷も「自由に生きてきた証」として肯定的に受け止められるようになりました。革を見つめることで、物質的な価値を超えた、新たな視点が生まれます。
環境に配慮されたサステナブルな鞣し
momijiでは、可能な限り環境に負荷を与えない鞣(なめ)し方法として、「ゼオライト鞣し」や「タンニン鞣し」を取り入れています。
ゼオライト鞣し:
鉱物であるゼオライトを使用し、生分解期間を短くすることで、土へ完全に還ることができる革を生み出します。
タンニン鞣し:
植物タンニン剤を使う、紀元前から続く伝統的な鞣し技術の一つです。古くは、鞣皮力のある植物の樹皮・幹・葉・実などを粉砕し、皮と一緒に水に浸けて鞣していました。
大昔から使われてきた革は、現代でも自然の中で循環できるサステナブルな素材です。momijiでは、この伝統的な素材を新たな視点で活用し、人・自然・文化の持続的な共生を目指しています。
参考URL
農作物被害状況:農林水産省: https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/index.html
ゼオライト鞣し: https://3sleathertechnology.com/tannery/
タンニン鞣し: https://dictionary.jlia.or.jp/detail.php?id=862
多様な人々が集い、
食の源から暮らしを耕す。
農福連携がもたらす可能性
「農福連携」という言葉があります。これは、障がい者など多様な背景をもつ人々が農業に関わり、自信や生きがいを得ながら社会参加を実現していく取組を指します(農林水産省HPより)。
この連携は、障がい者だけでなく、ひきこもり状態にある人や、高齢で就職が難しい人、生活困窮者など、多様な境遇の人々に「居場所」を提供する可能性を秘めています。
現在、日本では高齢者の人口が全体の大きな割合を占め、身体・知的・精神障がい者や、ひきこもり状態にある人々も相当数に上ると推計されています。人口減少が続く中で、相対的に高齢者や障がい者の割合は増加し、社会参加の機会が乏しい人々が増えていることが懸念材料です。
こうした人々が自らの生きがいや役割を見いだせる場をつくることは、自然環境を守ることと同様、次世代に向けた重要な課題と言えます。「農」は、すべての人の生活基盤である「食」を生み出す仕事。その一次産業が、より多様な人々を巻き込み、共に生きる社会を築く鍵となり得ます。
さらに農業が加工や販売、観光などへと広がる6次産業化[*1]により、雇用の可能性はあらゆる段階で拡大します。これは農業が人々の活躍の場として多様性を受け入れ、新たな価値創出へと繋がる可能性を示しています。
農業人口の減少と新たな担い手の必要性
日本の農業人口は減少の一途をたどっており、新規就農者も年々減っています。農業従事者の平均年齢は高く、高齢化が深刻化する中、後継者不足や耕作放棄地の増加、食料自給率の低下といった問題が顕在化しています。
こうした状況下、農福連携は新たな担い手の確保につながる有望な選択肢です。確かな技術や知恵を持ち、第一線を退いた高齢者や、個性が強く社会に溶け込みにくい人々——いわゆる障がい者と分類される人々も含め、潜在的な労働力は膨大です。多くの人々が働く場を得れば、所得の向上と節税効果、人手不足の解消につながります。彼らが活躍の場を見つけ、生きがいや自己実現の機会を得ることは、社会全体の持続可能性を高めることにもなります。
momijiが目指す「農」の形
momijiは、「革」の分野と同様、一次産業である「農」へと目を向け、人々の多様性を活かす仕組みづくりを志向しています。人々が働くことは、単なる生活手段を超え、生きがいを生み出します。全ての人に働く権利と居場所が確保される社会こそが、持続的で豊かな精神性をはぐくむ土壌です。
衣食住を通して生まれる様々な価値や精神的豊かさを広げるために、momijiはアパレルだけに留まらず、一次・二次・三次産業全般において多様な企業との連携を模索します。こうして社会全体が循環し、国内資源や人々の可能性を最大限引き出すことで、新たな価値観と伝統的な豊かさを次世代へと繋げていきたいと考えています。
[*1] 「6次産業化」とは、農林漁業者が自ら加工や流通・販売まで行うことで、一次産業から二次産業、三次産業へと事業を拡大し、新たな付加価値を生み出す取り組みを指します。
参考URL
農林水産省HP: 農福連携について
内閣府HP: 高齢化・障害者関連統計
農林水産省HP: 6次産業化について
書籍参考
濱田健司著 『農福連携の「里マチ」づくり』
古来の技と感性を現代に映し、
新たな美を咲かせる。
伝統工芸
私たちが生まれるよりはるか以前から、世界各地には受け継がれてきた多様な技術があります。日本にも、大陸から伝わった技が独自に進化し、各地域で花開いた伝統的な技術や表現が豊富に残されています。こうした伝統工芸は、今も職人たちによってその手仕事を目にし、触れることができます。しかし、暮らしの変化や大量生産・効率化の波の中で、伝統的な手仕事が育んだ価値は薄れつつあります。日本の伝統工芸品産業も例外ではありません。かつては大きな生産額を誇った時期もありましたが、その後ピークを迎えたあとに大幅に落ち込み、縮小しています。
この衰退は技術のみならず、そこに宿る多様な価値観や生き方、豊かな精神性も失われる可能性があります。長年にわたって培われた文化的背景や美的感性、生命への多面的な理解をも見失うことに他なりません。しかし、現代のテクノロジーや新しい価値観との融合によって、伝統は新たな生命を吹き込まれ、再び光を放つことができます。古来の美意識や精神性を、アートやデザインと掛け合わせることで、新たな表現が生まれると私たちは信じています。
momijiは、こうした再生の過程に立ち会い、かつての価値をもう一度輝かせることで、過去と未来、伝統と革新の橋渡しを目指し、多様な生き方が共存する社会へと歩み続けます。
アート
すべては「表現」から始まると私たちは考えています。何万年にもわたる表現の積み重ねが、今の地球と文化を形づくってきました。強い意志を秘めた表現は、人や社会、価値観、そして時代すら変える力を持ち得ます。一方で、小鳥のさえずりや、人のささやきのような小さな表現は、静かで温かなぬくもりを与えるかもしれません。
表現は大きさや形態は異なっても、生命に重さの差がないように価値に優劣はありません。受け手がどう受け取るか、その解釈の違いがあるだけです。
たとえば、子どもの言葉は偉い大人の発言と同様に耳を傾けられているでしょうか。高齢者の言葉は? 言葉を発しにくい人の独自の表現や、人との距離感が難しい人が見せる静かな発信は、どのように受け止められているでしょうか。耳だけ、目と耳、あるいは五感すべてを使わなければ感じとれない表現も存在します。
この世界には、人だけでなく動物や物質からも、絶えることなく無数の表現が生まれ、流れ続けています。私たちは、多様な背景と特性を持つ人々が、それぞれの表現を遊びに持ち寄れる「公園」のような空間を目指しています。そこにはさまざまな音、景色、感性が溶け合い、皆がアートをともに楽しめる場が生まれると信じています。
受け継がれた文化、多様な生き方と
作り手を伝えて未来へ紡ぐ。
様々なモノづくり企業、メーカー、職人の紹介
モノづくりのあり方は時代とともに変化してきました。稲作が始まったころからさまざまな産業革命を経て、今ではAI(人工知能)が登場し、ものすごいスピードで新しい技術や製品が生まれています。これからも急激な変化に合わせて、私たちの働き方や考え方も変わっていくでしょう。
一方で、何ヶ月もかけて一つのモノを丁寧に作る職人や、捨てられるはずだった素材を再利用して新しい価値を生み出すモノづくりメーカーもあります。彼らはそれぞれの信念や生き方をモノに込めており、私たちが精神的な豊かさを見つけるヒントを与えてくれます。
こうした多様なモノや職人の仕事を紹介しながら、私たちは「豊かさとは何か」を伝えていきたいと考えています。
祭りを通じて伝える、地域に根づく伝統文化の魅力
「祭り(まつり)」は、もともと神様や仏様、ご先祖様をまつる儀式のほか、記念や祝賀、商売や宣伝など、さまざまな目的で行われる行事のことです。最近では「フェス」と呼ばれることもあります。
その起源は古事記に書かれている「天の岩戸隠れ」の伝説だと言われています。太陽神であるアマテラスオオミカミには弟のスサノオノミコト(海の神)がいましたが、彼は荒々しい性格で、周囲に迷惑ばかりかけていました。その様子を見たアマテラスオオミカミは悲しみ、岩戸の中に隠れてしまいます。すると太陽神のいない世界は暗くなり、災いが増えてしまいました。困った八百万(やおよろず)の神々は、なんとかアマテラスオオミカミを呼び出そうと岩戸の前で盛大に騒ぎます。あまりの楽しそうな様子にアマテラスオオミカミは思わず外へ出てきて、再び世界に明るい光が戻ったと伝えられています。
こうした神話をルーツに持つ祭りは、誰でも参加でき、みんなで楽しめる“居場所”です。日本全国には約30万件もの祭りがあり、国内や海外から多くの人が訪れます。それが地域の活性化につながり、人々を元気にする力にもなります。
私たちは、そのような祭りの魅力をまだ知らない人々にも届けたいと考えています。お祭りやフェスのTシャツを作って販売するなど、いろいろな方法で情報を発信しています。